
「薬剤師になったら患者さまとじっくりお話しして、患者さまのお役に立ちたい」
そう願って、病院や薬局などの医療機関に勤務した薬剤師さんはとても多いと思います。
ですが実際は、目の前の仕事に追われたり、急いでいる患者さまからせかされたりで、じっくり話をしている暇なんてないと感じながら働いている薬剤師さんがほとんどなのではないでしょうか。
本当は患者さまとのコミュニケーションを多くとりたいのに、話す暇もないほどせわしなく仕事をしなければいけないなんて、いったい何のために薬剤師になったのかと、もどかしく感じてしまうこともありますよね。
ただ、薬剤師の全ての仕事が患者さまとじっくりお話できないのかというとそうではありません。
中には、患者さまからのお話を聞く時間をかなりとれる仕事もあります。
今回は、患者さまとじっくりコミュニケーションをとりたいという薬剤師さんにおすすめの職場を紹介していきます。
薬局での仕事はなぜ患者さまとじっくり話せない?
まず、多くの保険薬局や病院の薬局で患者さまと話す暇がない理由について考えてみましょう。
通常、患者さまは診察のために長い時間待ち、やっと診察が終ったかと思うと次は検査や会計でまた待たされますので、最後の薬局に来るときは疲れ果てていることがほとんどです。
そのような状況なので、とにかく帰りたいという気持ちが先行してしまうのが一般的で、薬剤師の話をじっくり聞こうという患者さまはめずらしいと言っても過言ではありません。
たとえゆっくり話をしたいという患者さまがいらっしゃったとしても、ゆっくり話をすることで他の患者さまの待ち時間が増え、他の患者さまをイライラさせてしまうため、時間をかけて話すことが難しいというのも理由の一つです。
つまり、患者さまが多くて忙しい薬局などでは、患者さまが安全に薬を服用できるように最低限のことを伝えるのが精一杯で、それ以上のコミュニケーションをとれる余裕がないというのが実際のところなのです。
患者さまとじっくり話せるおすすめの職場とは?
それでは、どのような職場ならコミュニケーションをとれる余裕があるのでしょうか。
病院の病棟服薬指導業務
いわゆるベッドサイドでの入院患者さんへの服薬指導です。
保険薬局の窓口の服薬指導と違い、薬を待っている患者さまがいるわけではありませんので、決められた時間内でなら患者さまとじっくり話すことができます。
実際に私が病棟服薬指導をした際、入院されている患者さまの多くは、病気に対する不安や疑問を専門家である誰かに話したいという気持ちが強いようにも感じました。
医師や看護師はベッドサイドにゆっくり座って話すことはほとんどありませんので、話す時間を取ってくれる薬剤師が患者さまにとってのカウンセラー的役割を果たすことも珍しくありません。
保険薬局では話さないような内容を患者さまと一緒に考えたり、また患者さまを励ましたりできますので、コミュニケーションをとることで患者さまのお役に立ちたい薬剤師さんにとって相応しい職場と言えると思います。
ただ、病院と言っても総合病院や大学病院の就職は新卒の薬剤師でないと難しいということがありますので、中小規模の病院も選択肢に入れたほうが転職しやすいということは覚えておいてください。
また、病棟がある病院でも病棟服薬指導を積極的に行っていなかったり、行っていても担当者がすでに決まっている場合もありますので、転職前に業務内容について必ず確認してくださいね。
患者さまの少ない保険薬局
どうしても薬局でのコミュニケーションをとりたいという場合は、取扱処方箋枚数の少ない調剤薬局に勤務するという手もあります。
患者さまが少なければ、薬を待っている人も少ないということですから、じっくり話すチャンスは忙しい薬局に比べると多いでしょう。
私の知り合いの話ですが、薬局に来る患者さまが一日30人くらいで、一人一人に時間をかけてテーラーメイドの服薬指導ができる薬局も実際にあるそうです。
そのような薬局は数少ないとは思いますが、探してみる価値はあるかもしれません。
薬局を探す際ですが、処方箋枚数だけではなく、勤務している薬剤師の人数もチェックしてください。
いくら取扱処方箋枚数が少なくても、薬剤師の数が極端に少なかったり、時には一人薬剤師ですべてこなさなければいけないという場合、患者さまとじっくりお話しする余裕なんてなくなってしまうからです。
薬局側に患者さまとどのくらいコミュニケーションをとれているのかを事前に確認するのも良いと思いますよ。
治験コーディネーター
患者さまとお話ししたいという目的での転職で忘れがちなのがこの治験コーディネーターという仕事です。
実はこの仕事、患者さまとお話しする機会がかなりあります。
私は病院の病棟業務も経験しましたし、保険薬局での勤務経験もありますが、治験コーディネーターをしていた時ほどのコミュニケーションはとれなかったと言っても過言ではないくらい、治験コーディネーターの仕事は患者さまと接するチャンスが多かったです。
まず、通常の薬剤師と治験コーディネーターでは患者さまに聞かなければいけない項目の数が違います。
通常の薬剤師は、薬歴や服薬状況、併用薬、検査値の結果などを窓口で聞き取ると思いますが、治験コーディネーターはそれに加えて服用した治験の薬の錠数、服用しなかった錠数、服用しなかったのはいつで、なぜ服用しなかったのか、前回に比べて症状が変わったかどうかの詳細、次の来院のスケジュール決定、場合によっては食事内容や運動の内容などなど。
とにかく質問しなければいけない項目が膨大にあります。
質問の数が多いということは、患者さまとのコミュニケーション時間がより多くなりますし、質問に付随する世間話的なものも増えるということです。
ときには、患者さまのプライベートの生活のことや仕事のことなどを聞く機会さえあり、患者さまと一緒に喜んだり悩んだりもしました。
このように患者さまとお話ししながら、治験薬や病態に関する不安を取り除く作業も治験コーディネーターの大切な仕事の一つですから、コミュニケーション重視の薬剤師さんには治験コーディネーターになることをぜひおすすめしたいです。
まず薬剤師の転職エージェントを利用してみましょう
ここまで、「患者さまとじっくりお話しできる仕事」について話してきましたが、転職後、確実にその希望を叶えるためには、転職エージェントの利用が欠かせないというのも覚えておいてほしいところです。
転職エージェントは、一般の私たちが知らない転職先の情報を持っていることが多いですし、私たちの希望に合った職場を探すお手伝いをしてくれますので、希望の職場を見つけて転職できる可能性がとても高くなります。
たとえば、「病院の病棟業務」のところで、病棟業務ができるところや新卒じゃなくても転職できる病院を探してくださいと書きましたが、転職エージェントはこのような希望を聞き入れて最適な場所を見つけてくれますし、「処方箋枚数が少なく患者さまとじっくりお話しできる薬局」という条件に対しても、私たちの代わりに薬局側に問合せをしてくれたりもします。
転職先への希望条件がある程度ある場合、自分で最適な転職先を探すのは難しいと感じたことがある人も多いのではないでしょうか。
転職のプロである転職エージェントの力を借りることで希望に合った職場に出会えるチャンスを増やしてみてください。
まとめ
今回は、患者さんとじっくり話したい薬剤師におすすめの職場をご紹介しました。
患者さまとのコミュニケーションを十分に取るためにはその環境が大切だということや、治験という分野においてじっくりお話しできる職種もあるということが分かったと思います。
患者さまと話すということは、薬剤師のただの満足感だけでなく患者様自身の心のケアや、薬を安全に服用していただくことにもつながるとても大切なことです。
もし事務的に薬を説明するだけの仕事にやりがいを感じなくなってしまったら、患者さまとのコミュニケーションがとれる職場への転職を考えてみてはいかがでしょうか。
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